この記事で分かること
- NISAとiDeCoの決定的な違いは節税額ではなく「途中で引き出せるか」であること
- iDeCoで必ずかかる手数料と、金融機関で差がつく手数料の内訳
- 口座を選ぶときに見る3項目(商品ラインナップ・手数料・積立の決済手段)
先に押さえるのは「引き出せるか」
NISAとiDeCoはどちらも税制優遇のある制度で、比較記事では節税額の話から始まることが多い。だが実務上、最初に判断すべきはそこではない。
iDeCoは原則60歳まで引き出せない。 NISAはいつでも売却して現金化できる。
この違いは、生活が変わったときに効いてくる。転職、病気、住宅の購入、子どもの進学。想定外の出費が来たとき、iDeCoの資産は当てにできない。
| NISA | iDeCo | |
|---|---|---|
| 途中の引き出し | いつでも可能 | 原則60歳まで不可 |
| 掛金の所得控除 | なし | あり(全額) |
| 運用益の非課税 | あり | あり |
| 受け取り時の課税 | なし | 課税対象(控除あり) |
| 口座管理手数料 | 無料が一般的 | 毎月かかる |
順序としては、生活防衛資金を現金で確保 → NISA → 余力があればiDeCoが無理のない組み方になる。iDeCoの節税は魅力的だが、流動性を失う対価としての優遇だと理解しておく。
NISAの枠は「復活する」
2024年から始まった新しいNISAでは、年間の投資枠がつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円の合計360万円、生涯で使える上限が1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)に設定されている。非課税で保有できる期間に期限はない。
旧制度と大きく違うのが、売却すると翌年に枠が戻る点だ。1,800万円の枠は「使い切り」ではなく、簿価ベースで再利用できる。ライフイベントで一度取り崩しても、あとから積み直せる。
この性質があるため、「使わないかもしれないお金」を置く先としてNISAは扱いやすい。
iDeCoの手数料は2層になっている
iDeCoで見落とされやすいのが手数料だ。どの金融機関を選んでも必ずかかる分と、金融機関ごとに差がつく分に分かれる。
| 費目 | 支払先 | 金額 | 差がつくか |
|---|---|---|---|
| 加入時手数料 | 国民年金基金連合会 | 2,829円(初回のみ) | つかない |
| 収納手数料 | 国民年金基金連合会 | 月105円 | つかない |
| 事務委託手数料 | 信託銀行 | 月66円 | つかない |
| 運営管理手数料 | 金融機関 | 月0〜450円程度 | つく |
つまり月171円は誰でもかかる。その上に運営管理手数料が乗るかどうかで差が出る。
月400円の差は、30年続けると14万4千円になる。運用成果と違って、これは確実に出ていく金額だ。運営管理手数料が無条件で0円の金融機関を選ぶのが基本になる。「残高◯万円以上で無料」といった条件付きの場合、条件を満たすまでの期間の負担を計算しておく。
なお、掛金を拠出せず運用だけを続ける状態(運用指図者)になっても、事務委託手数料は発生し続ける。
口座を選ぶときに見る3項目
NISAもiDeCoも、金融機関はあとから変更できる。ただし手続きに1〜2か月かかり、iDeCoは変更時に資産をいったん現金化する必要がある。最初にある程度絞っておくほうが手間は少ない。
① 商品ラインナップ
見るのは本数ではなく、低コストのインデックスファンドが入っているかだ。全世界株式や米国株式のインデックスで、信託報酬が年0.1%前後の水準のものが選べるかを確認する。
信託報酬は保有し続ける限り毎年かかる。年0.1%と年1.0%では、1,000万円を保有した場合に年9万円の差になる。iDeCoは商品数の上限が35本と決まっているため、この中身の質が金融機関選びの中心になる。
② 手数料
iDeCoは前述の運営管理手数料。NISAは、投資信託の買付手数料が無料かと、国内株・米国株の売買手数料を見る。主要なネット証券は投資信託の買付手数料を無料にしているところが多い。
③ 積立の決済手段
NISAのつみたてでは、クレジットカードで積み立てるとポイントが付くサービスがある。還元率は0.5〜1%程度で、上限が設定されている。
月5万円をカード積立して還元率1%なら、年6,000円分になる。運用リターンとは別に、確実に得られる分だ。ただし還元率は改定されることがあるので、これだけを理由に決めない。手持ちのカードとの相性はクレジットカードは何枚が正解?も参考にしてほしい。
iDeCoの節税額を自分で計算する
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象になる。軽くなる税額は、掛金に自分の税率を掛けて求める。
年間の節税額 = 年間掛金 ×(所得税率 + 住民税率10%)
会社員で月2万3千円(年27万6千円)を拠出し、所得税率10%の場合、27.6万円 × 20% = 年55,200円。これが毎年続く。
税率が高い人ほど効果が大きく、逆に課税所得がない人(専業主婦・主夫など)は所得控除の恩恵を受けられない。その場合、iDeCoの利点は運用益非課税だけになるので、流動性のあるNISAを優先したほうが合理的だ。
拠出できる上限額は職業や勤務先の年金制度によって変わる。会社員は勤務先に企業年金があるかどうかで枠が変わるため、総務や人事に確認するのが確実だ。
受け取り方で税額が変わる
iDeCoは受け取るときに課税される。ただし控除があるため、受け取り方の選択で手取りが変わる。
- 一時金で受け取る → 退職所得控除が使える。勤務先の退職金と同じ年に受け取ると、控除枠を共有することになる
- 年金で受け取る → 公的年金等控除が使える。他の年金収入と合算される
- 併用する → 両方の控除を使い分けられる
退職金が多い人は、一時金で全額受け取ると控除を超えて課税されることがある。受け取りは何十年も先の話だが、「出口で課税される制度である」ことは入る前に知っておく必要がある。
NISA・iDeCoの口座でよくある質問
Q. NISA口座は複数の金融機関で持てますか?
A. 持てません。1人1口座で、年単位でしか変更できません。変更したい年の前年10月から手続きが可能です。その年にすでに買付をしていると、翌年からの変更になります。
Q. iDeCoの金融機関を変更するとどうなりますか?
A. 保有商品をいったん売却して現金化し、新しい金融機関で買い直す形になります。移換の手続きに1〜2か月かかり、その間は運用が止まります。手数料が発生する場合もあるため、頻繁に変えるものではありません。
Q. 両方やる余裕がない場合はどちらを優先しますか?
A. 引き出せる柔軟さを重視するならNISA、所得控除の効果を取りにいくならiDeCoです。課税所得があり、60歳まで使わないと言い切れる資金であればiDeCoの節税効果は大きくなります。判断できないうちはNISAから始めるほうが、選択肢を残せます。
Q. 途中で積立額を減らせますか?
A. NISAはいつでも変更・停止できます。iDeCoは年1回まで掛金額を変更でき、拠出を止めることもできますが、止めても口座管理手数料はかかり続けます。
Q. 銀行と証券会社のどちらで開くべきですか?
A. 商品ラインナップの幅では証券会社が有利なことが多いです。銀行は取扱本数が少なく、信託報酬の高い商品が中心になっている場合があります。窓口で相談したいという理由がなければ、ネット証券が選びやすいです。
Q. 途中で積立をやめたら、それまでの分はどうなりますか?
A. すでに買った分はそのまま運用が続きます。NISAは非課税のまま保有でき、いつでも売却できます。iDeCoは拠出を止めても60歳まで引き出せず、口座管理手数料はかかり続けます。この差は再開のしやすさにも影響します。

