医療費で戻るお金は2種類ある。高額療養費と医療費控除を混同しない

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この記事で分かること

  • 高額療養費(健康保険から戻る)と医療費控除(税金が戻る)の役割の違い
  • 高額療養費の上限額の計算式と、事前に手続きして窓口負担を抑える方法
  • 医療費控除の対象になるもの・ならないものの線引き

名前が似ているが、出どころが違う

医療費が高くついたときに使える制度は2つある。よく混同されるが、お金の出どころも、手続きの相手も、金額の決まり方も違う。

高額療養費 医療費控除
出どころ 加入している健康保険 税務署(所得税・住民税)
何が起きるか 払いすぎた自己負担が戻る 課税所得が減り、税金が戻る
対象期間 暦月ごと(1日〜末日) 1月〜12月の1年間
手続き先 保険者(協会けんぽ、健保組合、市区町村) 確定申告
両方使えるか 使える(併用可) 使える

順番としては、まず高額療養費で戻し、戻ったあとの自己負担額をもとに医療費控除を計算する。この順序を逆にすると金額を間違える。

高額療養費は「1か月の上限」を決める制度

医療機関の窓口で払う金額には、1か月あたりの上限がある。上限を超えて払った分は、あとから戻ってくる。

上限額は所得によって区分され、70歳未満の一般的な所得区分(おおむね年収370万〜770万円)では次の式になる。

上限額 = 80,100円 +(総医療費 - 267,000円)× 1%

総医療費が100万円かかった場合を当てはめると、上限は約87,430円だ。3割負担なら窓口で30万円払うことになるが、その差額の約21万円が戻る計算になる。

所得が低い区分ではもっと低い上限(住民税非課税世帯なら35,400円)が設定され、所得が高い区分では上限が上がる。自分がどの区分かは、保険証を発行している保険者に確認できる。

同じ月に収めるかどうかで金額が変わる

高額療養費は暦月で区切る。月をまたぐと合算されない。

たとえば総医療費30万円の治療を、9月末から10月頭にかけて受けると、9月分と10月分に分かれてそれぞれ上限計算になる。同じ30万円を9月中に収めた場合と比べて、戻る額が少なくなることがある。

緊急でない予定手術なら、日程を月初に寄せることで自己負担が変わる可能性がある。担当医に相談する価値はある。

事前手続きで窓口負担そのものを抑える

高額療養費は「あとから戻る」制度だが、いったん立て替える必要がある。数十万円を用意するのは負担が大きい。

これを避けるのが限度額適用認定証だ。事前に保険者へ申請して交付を受け、窓口で提示すると、最初から上限額までしか請求されない。

マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合は、この認定証の提示が不要になり、窓口で自動的に上限額が適用される。入院が決まったら、真っ先にこの手続きを確認する。

4回目から上限が下がる

直近12か月のうち、すでに3回高額療養費に該当していると、4回目からは上限額が下がる(多数回該当)。一般的な所得区分では44,400円まで下がる。

長期の治療が続く場合、この仕組みを知っているかどうかで年間の負担が変わる。自分で申請する必要はなく、保険者が判定するが、該当していそうなのに反映されていない場合は問い合わせる。

医療費控除は「年間10万円」を超えた分

こちらは税金の話だ。1年間(1月1日〜12月31日)に払った医療費が一定額を超えると、超えた分が所得から差し引かれる。

控除額 = 実際に払った医療費 - 保険金などで補填された額 - 10万円

※総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%が基準になる。控除額の上限は200万円。

ここで注意したいのが、「10万円戻る」わけではないという点だ。戻るのは「控除額 × 税率」にあたる金額になる。

年間の医療費が30万円、補填なしの場合の控除額は20万円。所得税率が10%の人なら所得税で2万円、住民税(10%)でさらに2万円、合わせて約4万円が軽くなる計算だ。

「補填された額」を引き忘れない

生命保険の入院給付金、高額療養費で戻った分、出産育児一時金などは、その治療にかかった医療費から差し引く。全体の医療費から引くのではなく、対象となった治療ごとに差し引くのが正しい。

ここを間違えると申告額が過大になる。保険金を受け取った治療については、受取額を必ず確認しておく。

対象になるもの・ならないもの

対象になる 対象にならない
診察・治療費、薬代(処方箋) 健康診断・人間ドック(異常がなかった場合)
入院時の部屋代(大部屋) 差額ベッド代(本人希望の個室)
通院の公共交通機関の交通費 自家用車のガソリン代・駐車場代
医師の指示による医療器具 疲労回復・美容目的のもの
治療のための歯列矯正 美容目的の歯列矯正
出産費用、不妊治療 予防接種(一部例外あり)

通院の交通費は見落とされやすい。子どもの通院に付き添った親の交通費も対象になる。日付と経路をメモしておくだけで積み上がる。

なお、健康診断や人間ドックでも、そこで病気が見つかって治療につながった場合は対象になる。

家族の分をまとめる

医療費控除は生計を一にする家族の分を合算できる。しかも、必ずしも一番所得が高い人にまとめるのが正解とは限らない。

  • 所得税率が高い人にまとめる → 戻る額は増える
  • ただし総所得200万円未満の人がいる場合、その人の基準額(所得の5%)が低くなるため、そちらで申告したほうが控除額自体は大きくなることがある

家族の所得構成によって最適解が変わるので、両方の場合を計算して比べるのが確実だ。副業がある人の所得の考え方は副業の始め方と税金にまとめてある。

セルフメディケーション税制という選択肢

医療費が10万円に届かない場合でも、対象の市販薬を年12,000円超買っていれば、その超過分(上限88,000円)を控除できる制度がある。

対象になるのは「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる区分の市販薬で、レシートに対象である旨のマークが印字されている。ドラッグストアのレシートを見ると、該当商品に★印などが付いているのが分かる。

ただし医療費控除との併用はできない。どちらか有利なほうを選ぶ。また、健康診断や予防接種など、健康維持の取り組みを行っていることが条件になる。

医療費控除でよくある質問

Q. 領収書は提出しますか?

A. 提出は不要になり、「医療費控除の明細書」を作成して添付する形に変わりました。ただし領収書は5年間保管する義務があります。健康保険から届く「医療費のお知らせ」を添付すれば、その分の明細記入を省略できます。

Q. 確定申告の期限を過ぎてしまいました。

A. 医療費控除は還付申告にあたるため、その年の翌年1月1日から5年間さかのぼって申告できます。過去に申告し忘れた年があるなら、いまからでも間に合う可能性があります。

Q. 高額療養費の申請はいつまでにやりますか?

A. 診療を受けた月の翌月1日から2年が期限です。健保組合によっては自動で振り込まれるところもありますが、市区町村の国民健康保険は申請が必要な場合が多いので確認してください。

Q. 入院給付金が医療費より多かった場合はどうなりますか?

A. その治療にかかった医療費から差し引いてマイナスになっても、他の治療費から引く必要はありません。差額を他に回さず、その治療分をゼロとして計算します。

Q. 家族が別の健康保険に入っていても合算できますか?

A. 医療費控除は「生計を一にする」ことが条件で、健康保険が別でも合算できます。単身赴任や仕送りをしている学生の分も対象です。一方、高額療養費は保険者ごとの制度なので、加入先が違うと合算できません(同一保険者内なら世帯合算があります)。

Q. 交通費はどこまで対象になりますか?

A. 電車・バスなどの公共交通機関の運賃が対象です。領収書が出ないため、通院日と経路をメモで残します。タクシーは、公共交通機関が使えない事情(急病、深夜、歩行困難など)があれば対象になります。自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外です。

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