この記事で分かること
- 保険の見直しを、公的制度でカバーされる範囲から逆算する手順
- 2026年8月に変わった高額療養費制度と、医療保険の考え方への影響
- 解約する前に必ず確認しておくべき3つのこと
保険の見直しが後回しになりやすい理由
保険料は口座から静かに引き落とされる。請求書も届かないし、月末に残高が減っていても内訳を見ることはあまりない。だから金額の感覚が薄い。
生命保険文化センターの2024年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、二人以上世帯の年間払込保険料は個人年金保険を含めて平均35.3万円。月あたり約2.9万円になる。同センターの2025年度「生活保障に関する調査」では、加入世帯ベースの年間払込保険料が平均17.1万円。調査の対象範囲が違うので数字に幅はあるが、いずれにせよスマホ代より大きい支出だということは変わらない。
そして保険は、契約したときの家族構成と収入を前提に設計されている。子どもが独立しても、住宅ローンを完済しても、契約は当時のまま走り続ける。見直しの本質は、新しい商品に乗り換えることではなく、もう要らなくなった保障を降ろすことにある。
保険の見直しは公的制度から逆算する
民間保険は、公的制度でカバーしきれない部分を埋めるものだ。だから順番としては、まず公的な保障を確認して、足りない差額だけを民間で買う。
| 起きること | 公的制度でカバーされる部分 | 民間で埋める候補 |
|---|---|---|
| 病気・ケガで入院 | 健康保険(3割負担)+高額療養費制度 | 医療保険・がん保険 |
| 働けなくなる | 傷病手当金(最長1年6か月、標準報酬日額の約3分の2) | 就業不能保険 |
| 世帯主が亡くなる | 遺族基礎年金・遺族厚生年金 | 定期保険・収入保障保険 |
| 老後の生活費 | 老齢基礎年金・老齢厚生年金 | iDeCo・個人年金保険 |
2026年8月から高額療養費制度の上限が上がった
高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担が一定額を超えると、超えた分が払い戻される仕組みだ。この自己負担限度額が、2026年8月診療分から全所得区分で引き上げられた。所得区分は5区分のまま維持されるが、引き上げ幅はおおむね4〜38%の範囲で、所得が高い区分ほど上げ幅が大きい設計になっている。2027年8月には第2段階の改定も予定されている。
一方で、長期治療の負担を抑えるための「年間上限」が新たに設けられ、多数回該当の仕組みも維持される。
つまり、公的保障の水準が動いた。医療保険が不要になったわけではないが、「いくら足りないか」の計算前提は変わったので、入院日額を決め打ちで契約している人は一度計算し直す価値がある。
遺族年金も2028年に変わる
2025年6月に成立した年金制度改正法により、2028年4月から遺族厚生年金は原則5年間の有期給付になる。その代わり給付額は現行の約1.3倍に増額され、これまであった「年収850万円未満」という収入要件は撤廃される。障害状態にある人や就労収入が十分でない人には継続給付の仕組みが用意される。
死亡保障の必要額は、遺族年金でいくら入るかを引いた差額で決まる。制度が変わる以上、生活費保障の設計も影響を受ける。まだ2年先の話だが、いま長期の契約を結ぶなら頭に入れておきたい。
保険を解約する前に確認する3つのこと
- 住宅ローンの団信に入っているか … 団体信用生命保険に加入していれば、契約者が亡くなった時点でローン残債はゼロになる。この分の死亡保障を民間保険で二重に持っている人はかなり多い。住居費とセットで見るべき理由は住居費の見直しにも書いた
- 勤務先の制度を使えるか … 団体保険、共済、健保組合の付加給付。付加給付がある健保だと、高額療養費より手厚い水準で自己負担が抑えられることがある。これを知らずに医療保険を厚くしているケースは珍しくない
- 解約返戻金と再加入の可否 … 貯蓄型を途中で解約すると元本割れすることがある。また健康状態によっては同じ条件で入り直せない。「解約」ではなく「減額」や「払済」で保険料だけ下げる選択肢もある
判断に迷うなら、いきなり解約せず、契約内容の一覧(保障額・期間・保険料)を紙に書き出すところまでで一度止めるのがいい。書き出した時点で、重複や不要な特約が目に見えるようになる。
固定費全体の中での優先度は固定費の見直しはどこから手をつける?に、同じ「自動で引き落とされ続けるもの」であるサブスクの棚卸し手順はサブスクの棚卸しにまとめている。
保険の見直しでよくある質問
Q. 保険の相談窓口は無料ですが、なぜ無料なのですか?
A. 相談者ではなく保険会社から支払われる販売手数料が収益源だからです。無料であること自体は問題ありませんが、提案が「加入」に寄りやすい構造は知っておいてください。減額や解約が最適解でも、それは相談窓口の収益にならないためです。有料の相談先を選ぶという選択肢もあります。
Q. 貯蓄型と掛け捨て、どちらがいいですか?
A. 一概には言えませんが、判断を分けるのは「保障と貯蓄を1つの商品でまとめたいか」です。一本化すると管理は楽になる代わりに、途中解約したときの自由度が下がり、コスト構造も見えにくくなります。保障は掛け捨てで確保し、貯蓄はNISAやiDeCoなど別の器で持つほうが、それぞれを個別に止めたり増やしたりできます。どちらを選ぶにせよ、商品ごとの手数料と解約時の条件は必ず数字で確認してください。
Q. 見直しは何年おきにやるべきですか?
A. 年数より、ライフイベントを起点にするほうが実用的です。結婚、出産、子どもの独立、住宅の購入、転職、住宅ローンの完済。このどれかが起きたら必要保障額は動いています。何も起きていない年は、保険料の総額を確認するだけで十分です。
Q. 「今なら安く入れる」と言われました。
A. 年齢が上がるほど保険料が上がるのは事実なので、その説明自体は間違っていません。ただしそれは「今契約する理由」ではあっても「その商品を選ぶ理由」ではありません。必要保障額の計算を先に済ませ、複数社を同じ条件で比較してから決めても遅くはないです。急かされたら、いったん持ち帰ってかまいません。
